| name | scenario-writing |
| description | ADVゲーム「月灯り」のシナリオテキストを執筆・改善するためのスキル。
自然な会話、環境描写、感情表現、ペーシングに関する包括的なガイドライン。
「シナリオを書いて」「テキストを改善して」「会話を自然にして」「シーンを追加して」
「ストーリーを書いて」「台詞を直して」「場面を膨らませて」といった依頼で発動。
唐突さを排除し、読者が行間を読める余白のあるテキストを目指す。
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ADVシナリオライティングスキル — 「月灯り」制作ガイド
前提条件: scenario-continuity スキルの必須適用
このスキルを使う時は、scenario-continuity スキルを必ず併用すること。
美しいテキストも、論理的に矛盾していれば台無しになる。
「どう書くか」の前に「世界が壊れていないか」を確認する。
執筆前の必須手順
シナリオを書く・修正する前に、以下を必ず実行すること:
- 対象章の前後の章ヘッダー(章の状態差分)を読み、世界の状態を把握する
- 対象章の全シーンの状態コメント(前提/知識/変化/結果)を読む
- 知識追跡表を確認し、主人公がこの時点で知っている情報を把握する
- 書き終えた後、scenario-continuity の統合チェックリストを全て実行する
修正時の伝播確認
1つのシーンを修正した場合:
- 修正内容が後続シーンの前提を変えていないか確認する
- 同じパターンの問題が他の章にないか全章をスキャンする
- 状態コメントを修正後の内容に更新する
核心原則
ADVシナリオの品質は「書かれた量」ではなく「書かれなかったものの存在感」で決まる。
一杯のコーヒーに込められた沈黙が、千の言葉より雄弁になりうる。
1. 自然な会話文の書き方
現実の会話の再現
現実の人間は言いたいことを最後まで言わない。途中で言い淀み、話題を変え、省略する。
悪い例(説明的・不自然):
美咲「私は東京から引っ越してきた佐藤美咲です。カフェで働きたいと思っています」
良い例(自然・余白がある):
美咲「あの……ここ、まだ人を探してたりします?」
美咲「……あ、いきなりすみません。佐藤、です。佐藤美咲」
サブテキスト(言外の意味)
キャラクターは本心を直接口にしない。
- 言い差し(……) — 言葉を途中で止め、読み手に補完させる
- 話題の回避 — 核心に触れそうになると別の話を始める
- 行動で答える — 質問に言葉で返さず動作で返す
- 反復のズレ — 同じ言葉を違う文脈で使い、意味の変化を見せる
「間」の表現
沈黙そのものが台詞である。
蓮「……」
長い沈黙だった。
カウンターに置かれたカップから、
細い湯気だけが、まだ揺れている。
蓮「……淹れ直そうか」
「淹れ直そうか」はコーヒーの話をしているようで、「もう一度やり直せないか」を含む。これがサブテキスト。
2. 人物描写 — 目に浮かぶように書く
初登場時の三段描写
キャラクターが初めて登場するシーンでは、必ず以下の3層で描く:
① 全体印象(遠景) — 体格、雰囲気、第一印象(2-3行)
② 特徴的な部分(近景)— 髪型、服装、アクセサリー、手の質感(3-5行)
③ 行動で性格を見せる — 最初の仕草、視線の動き、座り方(2-3行)
悪い例:
女性が入ってきた。30代くらいだろうか。
良い例:
栗色の髪を肩のあたりでゆるくひとつに結んだ女性が入ってきた。
白いブラウスにリネンのワイドパンツ。ベージュのストールが肩にかかっている。
華奢だけれど、どこか芯のある佇まい。
窓際の席に座ると、鞄から文庫本を取り出した。
左手の人差し指でページの端を押さえ、右手でページをめくる。
——慣れた動作だった。
設定資料との連携
characters.mbt の各キャラクターには appearance / mannerisms / expression / voice が定義されている。シナリオ執筆時は必ず参照し、以下を守る:
- 初登場: appearance から3つ以上の要素を使う
- 再登場: mannerisms から1つ以上の仕草を入れる
- 感情の変化: expression の記載に沿って表現する
- 台詞: voice の特徴を反映する
再登場時の描写
2回目以降の登場では、全身描写は不要。代わりに:
- 変化した部分だけを描く(いつもと違う服、いつもと違う表情)
- 定番の仕草を1つ入れる(読者に「あの人だ」と認識させる)
- 前回との比較で関係性の変化を示す
佐倉さんが来た。いつもの窓際に座る。
……今日は本を開かない。カップの縁を指先でなぞっている。
何か考え事をしているのだろう。
身体的な「名刺」
各キャラクターに「これを描けばその人と分かる」身体的特徴を1つ決めておく:
| キャラ | 身体的名刺 |
|---|
| 佐倉 | ページの端を押さえる左手の人差し指 |
| 天野 | 左手首のミサンガ、前髪を掻き上げる仕草 |
| 宮内 | 眼鏡を外して拭く仕草、左手薬指の銀の指輪 |
| 神崎 | ボールペンをノックする音、赤いリップ |
| 桐谷 | コーヒーの色を確かめる所作、きっちり描いた眉 |
3. Show, Don't Tell — 「見せる」技術
読者に「この人は優しい」と教えるのではなく、「優しいと感じさせる」場面を書く。
具体テクニック
癖・所作で性格を見せる:
- せっかちな人物 → カップをソーサーに戻す音が少し強い
- 緊張している → メニューの角をずっと指で撫でている
- 嘘をついている → 目は笑っているのに、スプーンを握る指が白い
比較で変化を見せる:
初めて来た日、彼女は入口で三分間立ち尽くしていた。
今は——ドアを開けるなり「いつもの」と言う。
物で感情を語る:
飲み物の選択、砂糖の量、カップの持ち方——カフェは「語らない物語」の宝庫。
注文はブラックコーヒー。
いつもカフェラテを頼む彼が、今日に限って。
……何かあったんだ。
4. シーンのペーシング(五段階構成)
1シーンの推奨構成
① 導入(空気を作る) — 場所・時間・雰囲気。2〜4テキストブロック
② 展開(動きを起こす) — 人物の登場、会話の開始
③ 深化(核心に触れる) — そのシーンで最も重要なやりとり
④ 転換(変化を見せる) — 何かが変わった瞬間。感情でも関係性でも
⑤ 余韻(呼吸を置く) — すぐに次へ行かず、シーンの温度を残す
推奨ボリューム
1章あたり: 3〜5シーン
1シーンあたり: 30〜60テキストブロック(重要シーンは80〜100)
章の内部構造:
シーン1: 日常(前章の余韻 + 新しい日常)
シーン2: 変化(新要素の導入 or 関係性の進展)
シーン3: 深化(その章の核心)
シーン4: 余波(核心後の静けさ、キャラの内省)
シーン5: 引き(次章への橋渡し)
会話とナレーションの比率
ADVはナレーション比率が高いと読み疲れる。背景・立ち絵・BGMがナレーションの役割を代替するため。
現在の月灯り: 15-20% 会話 / 80-85% ナレーション ← 小説に近い
ADV標準: 65-75% 会話 / 25-35% ナレーション
目標: 70% 会話 / 30% ナレーション(最低65%)
リンターで自動チェックされる。65%未満で警告が出る。
文学的にしすぎず、キャラの会話で魅力を見せる。
ナレーションは「場の空気を作る最低限」に留め、キャラの掛け合いをメインにする。
「説明的」(彼女は悲しそうだった、店は静かだった)は会話や仕草に置き換える。
5. 掛け合い(バンター)の技術 — キャラの魅力は会話で見せる
参考: 葵せきな(生徒会の一存)— 4コマ小説のリズム、多方向ツッコミ/ボケ
参考: 丸戸史明(WHITE ALBUM 2)— 日常会話のリアリティで感情を伝える
参考: 麻枝准(Angel Beats!)— 日常コメディの蓄積が感動を生む
掛け合いの基本構造
2人の会話は3-5往復で1つのビートを作る:
天野「店長、今日なんか難しい顔してないすか?」 ← 起(気づき)
主人公「……そう? いつも通りだと思うけど」 ← 承(否定)
天野「いやいや。眉間のシワが深さ3ミリっすよ」 ← 転(具体化・ユーモア)
佐倉「……2ミリね」 ← 結(第三者の介入)
天野「測ってたんすか佐倉さん!?」 ← オチ
3人以上の会話設計
| 人数 | テンポ | 注意点 |
|---|
| 2人 | 3-5往復で1ビート | 1対1の親密さ。深い話に向く |
| 3人 | 2-3往復ごとに3人目が介入 | 「沈黙の聞き手」を1人作ると自然 |
| 4人+ | ペアを回す。全員同時に喋らせない | A↔Bの会話中にC→Dがリアクション |
「登場するが無言」を減らす
リンターで自動チェックされる。キャラが登場しているのにセリフ0行で警告が出る。
完全に無言でいさせる場合は、非言語リアクションを最低1つ入れること:
✗ 佐倉が同じ空間にいるが一切言及なし → 読者は佐倉を忘れる
✓ 佐倉は窓際で本を読んでいる。天野の話を聞いて、ページをめくる手が一瞬止まった。
→ 無言だが「聞いている」ことが伝わる。セリフなしでもキャラが生きている
ただし、無言の章が3章以上連続する場合はセリフを追加すべき。
小さな一言(感想、注文、相槌)でも、キャラの存在感と魅力を維持できる。
キャラクター間の直接会話(主人公を介さない)
主人公がカウンターにいる間に、客同士が話す場面を入れること:
天野「佐倉さんって、いっつも同じ席っすよね」
佐倉「……窓際が落ち着くの」
天野「おれはカウンター派っすね。店長と喋れるし」
佐倉「……だから落ち着かないのよ、そこ」
天野「ひでぇ!」
この5行で天野と佐倉の関係性(距離感のある親しみ)が伝わる。
主人公の内面語りを10行使うより効果的。
会話で性格を見せるパターン集
| パターン | 効果 | 例 |
|---|
| 注文の仕方 | 性格が出る | 「ココアで」(天野/即決)vs「……いつもの」(佐倉/変化を嫌う) |
| 他人の話への反応 | 共感力が見える | 天野「マジすか!」vs 宮内「……そうか」vs 神崎「で?」 |
| 沈黙の破り方 | 距離感が見える | 天野は沈黙に耐えられない / 佐倉は沈黙を心地よく感じる |
| 帰り際の一言 | 本音が漏れる | 佐倉「……また来ます」(初期は言わなかった) |
| 間違いへの反応 | 価値観が見える | 桐谷「効率の問題です」vs 天野「でも美味いじゃん」 |
6. 場面転換の技術
避けるべき転換
【悪い例】
――翌日。
次の日も、カフェは通常通り営業していた。
効果的な転換技法
ブリッジ・オブジェクト(橋渡しの小物):
【シーンA末尾】雨が窓を叩く音を聞きながら、店の明かりを消した。
【シーンB冒頭】窓に残った雨粒が、朝日を受けて光っていた。
感覚の連鎖(音→音、匂い→匂い):
【シーンA】彼女の笑い声が、小さくなっていく。
【シーンB】風鈴の音で目が覚めた。……あの声に似ていた。
対比による切り替え:
【シーンA末尾】テーブルの上には、二人分のカップ。
【シーンB冒頭】テーブルの上には、一人分のカップ。
7. キャラクターの声の差別化
声を分ける7要素
| 要素 | チェック |
|---|
| 語尾 | 「〜だな」「〜ですね」「〜じゃん」 |
| 一人称 | 私、僕、俺、あたし |
| 語彙レベル | 難語/平易 |
| 文の長さ | 長文で理屈っぽい/短文でぶっきらぼう |
| 話題の選び方 | 自分から話す/聞かれないと話さない |
| 反応速度 | 即答する/間を置いてから答える |
| 比喩の傾向 | 料理/天気/音楽 等 |
カフェでの応用
コーヒーとの関係性でキャラを立てる:
- 毎回同じ注文 → 変化を嫌う。安定を求めている
- 毎回違う注文 → 好奇心旺盛だが、何かから逃げている
- 注文せず長居する → 居場所を探している
注意: 全員を「説明役」にしない
現実の人間は情報を間違え、誇張し、省略し、嘘をつく。
8. 環境描写 — 空間が語る物語
カフェで使える描写の層
【時間層】
朝 → 光の角度、鳥の声、新聞を広げる音
昼 → 食器の音、話し声の重なり、街の喧騒
夕 → 西日の色、帰り道の足音
夜 → 静寂、一人の客、閉店作業の音
【季節層】
春 → 桜の花びらがドアから入ってくる
夏 → アイスコーヒーの氷が溶ける速さ
秋 → 焙煎の香りが似合う乾いた空気
冬 → 窓の結露、手を温めるようにカップを包む客
【感情層】
平穏な日 → 規則正しい珈琲豆を挽く音
不穏な日 → 同じ音が、なぜか耳障りに聞こえる
同じ空間の「変化」で時間経過を見せる
【第一章】カウンターの端に、前の店主の写真立て。中身は空。
【第四章】いつの間にか、みんなで撮った写真が入っていた。
【最終章】写真立ての写真が、少しだけ日に焼けていた。
9. 感情の波形設計
感情の三幕構造
【溜め(Setup)】 日常の中に小さな違和感を仕込む
【高まり(Escalation)】 違和感が無視できなくなる。あえて語らない
【解放(Release)】 感情が溢れる瞬間。小さな動作や短い一言ほど効果が強い
重要: 後半の章を圧縮しない
- 大きな感情の前に「静かな日常」を置く(嵐の前の静けさ)
- クライマックスの瞬間は「引き延ばす」(時間がゆっくり流れる描写)
- クライマックス後に「日常の変化」を見せる(同じ空間が違って見える)
10. 日本語ADV特有の表現規則
一画面一感情の原則
ひとつのテキストブロック(クリック送り一回分)に複数の感情を入れない。分割してクリックを「間」にする。
行末の余白
完結した文 → 「雨が降っていた。」(客観的・説明的)
余韻のある文 → 「雨が降っていた」(主観的・感慨深い)
さらに余韻 → 「雨が、降っていた——」(時間が引き延ばされる)
ト書きの文体
ADVのナレーションは小説より短く、詩に近い。体言止め、倒置、反復を多用。
【小説的(冗長)】私は窓の外を見た。雨が降っていて、通りを歩く人々はみな傘をさしていた。
【ADV的(リズム)】窓の外、雨。傘の列。いつもの通り。……なのに今日は、少しだけ違って見えた。
11. 三度触れの法則(Plant, Remind, Pay Off)
物語の要素は最低三回触れることで記憶に定着し、回収時の感動が最大化される。
【第一触 — 植え付け】何気なく存在を示す。読者は忘れてもいい
【第二触 — 想起】意味をほのめかす。「あ、あれ?」と思わせる
【第三触 — 回収】意味が完成する。「最初からここに繋がっていたのか」
運用ルール
- 第一触は風景の一部として溶け込ませる
- 重要な要素は三回以上触れてよいが、三回未満は避ける
- 逆三度触れも有効: 意味ありげ → 何でもなかった → やはり意味があった
12. 自然な情報開示(Anti-Exposition)
情報を「渡す」のではなく「漏らす」
悪い例(一度に全部説明):
美咲「私、三年前に引っ越してきたの。前は東京でデザイナーをしてて、でも体を壊して」
良い例(断片的に漏れる):
【第2章】注文票の裏に無意識にスケッチしていた。プロの手つきだった。
【第4章】「……デザインとか興味ある?」「……ん、まあ。昔はね」
【第6章】「東京にいた頃の話、する?」「……デザイナーだった」「……それだけ」
四原則
- 必要な時に、必要な分だけ — 読者がその情報を必要とするタイミングまで待つ
- キャラクターの動機に従う — なぜ今この人がこの話をするのか
- 全部言わない — 70%伝えて残りは読者に推測させる
- 行動で裏付ける — 口で言ったことを後の行動が証明(または裏切り)する
シナリオチェックリスト
A. 整合性チェック(scenario-continuity スキル準拠)
B. テキスト品質チェック(このスキル)
C. 修正時の伝播チェック